父の車とカーカースト

車が欲しい。切実に。車があれば解決することがたくさん。

この前、コンビニの前で大学生くらいの子たちが「20代で車の免許取らねえやつは終わってる」って言ってて妙に納得。本当に君たちの言う通り、20代で車の免許取らねえやつは終わってるよ。

僕が免許を取ったのはちょうど2年前の36歳の時。徳島県の合宿免許で18歳くらいの子たちと免許取り消しになったおじさんたちと軽めの刑務所みたいな生活を16日間続けて取った。毎日先生が変わるんだけど、そのたびに何かあたりが強いなと思っていたら僕の年齢をみて免許取り消しになったくそ野郎めと思っていたとのこと。初めてです……というとコロッと態度が変わるんだからもう。

僕の地元の大分みたいな田舎では20代でカーカーストが形成される。顔が悪かろうが良かろうがまずは車を持っているやつが一番モテて、その次に免許だけ持ってるやつ。次が自動二輪。何にも免許がないやつに女子は一切見向きもしない。この前久しぶりに地元に帰ったけれどこのカーカーストは今でも変わっていないみたいだった。車がないと大変やろうなあと思うような土地に行ってみたときはぜひよく観察してみてください。

もちろん僕は免許がなかったのでカーカーストでは最下位。「車何乗ってるの?」と聞かれたら、「サーフ。でも今は免停中」などと訳の分からない嘘をつき通してなんとか生きてきた。その頃は女にモテようとチャラチャラ車に乗りやがって!と思っていたけれど、今になって20代で車のローンを払ったり実はあいつらすごく偉いやつらだったんだなと本当に思う。

というか車の運転ってこんなに楽しかったんだ。20代で免許を取っていたらもっといろんなところに行けたんだろうなあ。

さっき書いたこの前久しぶりに地元に帰ったときに父の車を初めて運転した。大きなハイエースにまだ乗っているのかなと勝手に思っていたけれど、父の車は小さな軽自動車に変わっていた(写真のやつ)。相変わらず座席は砂まみれで、後部座席には大工道具や釣り道具が散乱して潮のにおいしかしなかった。

「お!お前もやっと運転するようになったか!」みたいな言葉が聞けるかと思ったけど、父は「ほな頼むで」と言うだけでその後は何も言わなかった。父がそういう人だったことを忘れていたくらい会うのは久しぶりだった。

とはいえ父が助手席に乗るのも初めて見たし、父からしても僕が運転する車に乗るのは初めてなもんだから車内には変な緊張感が漂っていた。「建物は変わっちょんけど道はそんな変わってねえな」なんて当たり前のことを言うのがやっとで、父はやっぱり静かに頷くだけだった。そんな父の車に乗って二人で初めてご飯を食べに行った。何が食べたいか聞くと父は「寿司やな」と手短に答えた。適当な店に入り(すごい高かったけど)カウンターに座って二人で黙々と寿司を食べた。父は一切店員さんにネタを注文することはなく、僕の耳元で小さく言うだけでまるで通訳のように僕が父の分も店員さんに注文した。父がアナゴが好物だということを初めて知った。

会計をすることになって僕が払おうとすると父が「いらんちゃ」と言って先にお金を出した。僕と会う前に銀行で下ろしてきたんだろう。一万円札にはしわ一つなかった。父はそういう人だ。

最後に父の家に送り届けたとき、急に「お父さんが後ろ見といてやるから」と外に出て車を誘導を始めた。仕事ではいつも大きなバンを狭い駐車場に入れているし、小さな軽自動車くらいなら誘導なんてしてくれなくても車庫入れできるけれど大人しく父に従った。何となくそれが正解だと思った。

別府から京都に帰る日、父が車で迎えに来てくれた。別府駅まで送ってくれた父は「ほなな」と言うだけだった。ノロノロとロータリーを出ていく父の軽自動車の後ろから、カーカーストの頂点みたいな若い男がワゴンに女を載せて父の車にピッタリつけて煽っていた。20代で免許を取ったんか何か知らんけど殺してやろうかと思った。

ああ、車ほしいな。

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